「AIは正しいことをするか」——この問いは、技術の問いではありません。
AIが医療診断を下し、採用選考を行い、犯罪リスクを予測し、ニュースを選ぶ時代に、「正しさとは何か」という問いは、哲学者の書斎から社会の真ん中へと引き下ろされてきました。
哲学者のカントは「人間を手段としてではなく、目的として扱え」と語りました。AIが人間の意思決定を代替するとき、AIは人間を「目的」として扱っているでしょうか。それとも効率化のための「手段」として扱っているでしょうか。
功利主義の立場からは「最大多数の最大幸福」を実現するAIが正しいAIといえるでしょうか。しかしその「幸福」から取り残される少数者の存在は、どう考えればいいのでしょうか。
AIの倫理は、人類が何千年もかけて考えてきた「正しさとは何か」という問いを、新しい形で私たちに突きつけています。そして今、その問いに答えるための仕組み——AIガバナンス——を、世界中が急いで作ろうとしています。
この章では、AIをめぐる倫理的な問いと、それに向き合うための制度・技術・社会の仕組みを、一緒に考えていきましょう。
10-1 AIと社会のルール
AIをどう管理し、どんなルールのもとで動かすべきか——世界が共通の答えを模索している、ガバナンスの全体像を見ていきます。▶続きを読む
10-2 AIが引き起こす具体的な問題
AIは壊され、騙され、悪用される——AIを攻撃から守り、悪意ある使われ方を防ぐための知識を整理します。▶続きを読む