ここまでで見てきた自然言語処理の技術は、単語を数えたり、文脈を読んだり、文章を生成したりと、一見すると少し抽象的に感じられたかもしれません。
でも、それらはもう、私たちの生活のいろいろな場所で使われています。
たとえば、
・検索窓に知りたいことを打ち込む
・外国語の記事をざっと読む
・長い文章を短くまとめたい
・チャットAIに相談する
・商品レビューを集めて評判を知る
こうしたことの裏側には、自然言語処理の技術が動いています。
つまり自然言語処理とは、ことばの中から意味を取り出し、人の知りたいことや伝えたいことを助ける技術なのです。
では、実際にどんな場面で使われているのでしょうか。
検索エンジン
いちばん身近な例の一つが、情報検索です。
私たちは検索窓に、
・G検定 勉強法
・猫が食べてはいけないもの
・仙台駅 ランチ おすすめ
のように打ち込みますよね。
でも検索エンジンの仕事は、ただ同じ単語が入っているページを探すことではありません。
たとえば「G検定 勉強法」と検索したとき、知りたいのは単語そのものというより、どう勉強すれば合格しやすいのかという情報です。
自然言語処理は、入力されたことばの意味をある程度読み取り、たくさんの文章の中からその問いに近い情報を見つける助けをしています。
たとえるなら、大きな図書館で司書さんに「こういう本、ありませんか」と尋ねるとき、司書さんが表面の単語だけでなく、こちらが何を探しているのかまで少し考えてくれる感じです。
つまり検索は、自然言語処理が人の問いをことばから読み取る代表的な活用例です。
機械翻訳
自然言語処理の応用として、昔から有名なのが機械翻訳です。
・英語のニュース記事を日本語で読む。
・外国語のサイトをざっと理解する。
・旅行先で、看板やメニューの意味を知る。
こうした場面で、機械翻訳はもうかなり身近になっています。
ここでは単語を一つずつ置き換えるだけでは足りません。
文全体の意味を読み取り、別の言語で自然な文に組み直す必要があります。
だから機械翻訳には、
・単語の意味
・文脈
・語順の違い
・省略や言い換え
などを扱う自然言語処理の力が詰まっています。
たとえるなら、外国語の手紙をそのまま写すのではなく、その内容を受け取って、別の言葉の手紙として書き直すことに近いです。
つまり機械翻訳は、自然言語処理が、異なることばどうしの橋渡しをする技術だと言えます。
文書要約
私たちには、長い文章を全部読む時間がないことがあります。
ニュース記事、会議の議事録、報告書、論文、説明文……。
全部を丁寧に読むのは大変です。
そこで役立つのが、文書要約です。
文書要約では、長い文章の中から重要な部分を取り出したり、全体の意味を短く言い換えたりして、この文章は、結局何を言っているのかを短くまとめます。
これは、人が読書メモを作るのに少し似ています。
ただ全部を切り詰めるのではなく、何が本筋で、何が補足なのかを見きわめなければなりません。
だから文書要約は、自然言語処理の中でも意味の中心をつかむ力が強く問われる仕事です。
最近では、長い記事の要点をざっと知りたいときや、会議内容を素早く振り返りたいときなどにも活用されています。
質問応答
質問応答も、自然言語処理らしさがよく出る応用です。
たとえば、
・この文章の主人公は誰?
・富士山の高さは?
・会議は何時から?
・この制度の違いは何?
といった問いに対して、適切な答えを返します。
ここでは、ただ文章を読むだけでは足りません。
質問が何を求めているかを理解し、必要な情報を探し、それを答えとして返す必要があります。
たとえるなら、本を読むだけの人ではなく、読んだ内容をもとに質問に答えられる人に近いです。
最近のチャットAIや検索補助も、この質問応答の力と深く関わっています。
つまり質問応答は、自然言語処理が読んだことを、相手の問いに合わせて返す技術だと言えるのです。
感情分析
自然言語処理は、文章の中の感情や評価を読むことにも使われます。
たとえばレビュー文なら、
・すごく満足している
・少し不満がある
・怒っている
・喜んでいる
といった向きを読み取ることができます。
これは、企業が商品やサービスの評判を知りたいときによく使われます。
SNSの投稿やレビューの山を、人間が全部読んでいくのは大変ですよね。
そこで自然言語処理を使えば、全体として、どんな気持ちの反応が多いのかをつかみやすくなります。
ただし、ここはなかなか繊細な仕事でもあります。
皮肉や冗談、文脈によるニュアンスを読み取ることは、なかなか難しいです。
だから感情分析は、ことばの奥にある気配を読もうとする、自然言語処理の中でも少し人間らしい仕事の一つです。
チャットAI・対話システム
いま、いちばん身近で印象的な自然言語処理の応用の一つが、チャットAIや対話システムです。
ここでは機械は、単に一つのタスクをこなすだけではなく、
・質問に答える
・相談に乗る
・言い換えをする
・文章を整える
・アイデアを出す
・雑談する
といった、幅広い言葉のやりとりを行います。
これは、自然言語処理のいろいろな力が合わさった形だと言えます。
・文脈を読む
・質問の意図をつかむ
・必要な情報を選ぶ
・自然な文章を返す
そうした仕事が一つになって、初めて「対話らしさ」が出てきます。
昔のコンピュータは、人が機械に合わせて命令を書かなければ動きませんでした。
でも今は、人がふつうのことばで話しかけ、機械がそれに自然に返してくる。
ここに、自然言語処理の大きな変化があります。
メール、校正、言い換え支援
自然言語処理は、読んだり答えたりするだけでなく、書くことを助ける場面にも広く使われています。
たとえば、
・メールの下書き
・誤字脱字の修正
・言い換えの提案
・文章のトーン調整
・やさしい日本語への言い換え
などです。
人は、「何を言いたいか」はわかっていても、それをちょうどよい言葉にするのが難しいことがありますよね。
自然言語処理は、そうした頭の中にあることを、書きやすくする仕事にも役立ちます。
たとえるなら、書き手の横に座って、「こう書くと言いやすいかもしれません」「もう少しやわらかくできますよ」と声をかけてくれる補助役のような存在です。
カスタマーサポートや業務支援
企業の問い合わせ窓口や社内業務でも、自然言語処理はたくさん使われています。
たとえば、
・よくある問い合わせへの自動応答
・社内文書の検索
・FAQの整理
・問い合わせ内容の分類
・議事録の要約
などです。
ここでは自然言語処理が、人の仕事を全部置き換えるというより、ことばのやりとりにかかる時間や負担を軽くする方向で役立っています。
たとえば問い合わせメールが大量に届くとき、内容を自動で整理できれば、人はより複雑な相談に集中しやすくなります。
つまり自然言語処理は、日常のコミュニケーションだけでなく、仕事の中のことばの流れも支えているのです。
まとめ
こうして見てみると、自然言語処理は本当に幅広い場所で使われています。
・探す
・訳す
・まとめる
・答える
・感情を読む
・対話する
・書くのを助ける
つまり自然言語処理は、人がことばでしている仕事を、一部助けたり、肩代わりしたり、広げたりする技術なのです。
しかも、その相手は研究者だけではありません。
学生も、会社員も、買い物をする人も、旅行する人も、ふつうの生活の中で、すでにこの技術に触れています。
だから自然言語処理は、AIの中でもとくに人の毎日のことばの生活に近い技術だと言えるのです。
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