2-1-2 第2次AIブーム

第一次AIブームのあと、人々はこう思いました。
「機械にとって、自ら考えることが難しいなら、知識そのものを入れればいいんじゃない?」

そこで生まれたのが、エキスパートシステム
人間の専門家の頭の中を、
もし〇〇なら△△
もし××なら□□
という形で書き出して、コンピュータに教え込む。
いわゆるルールベースAI

医師の診断、技術者の判断、熟練者のノウハウ。
人間の知恵を一つずつ拾い集めて、AIに移植しようとした時代でした。
第二次AIブームは、「人間の頭を、丁寧に写し取ろうとした時代」。

最初は、うまくいっているように見えました。
特定の分野では、専門家レベルの答えを出すAIも現れて、これで本当に賢くなるかも……そんな期待が広がります。
でも、だんだん気づいてしまう。
知識って、思っていたよりずっと多い。しかも、言葉にできない感覚や、状況に応じた判断や、「なんとなく」の積み重ねでできている。それを全部、ルールとして書くのは、ほとんど不可能。
ここで出てくるのが知識獲得のボトルネック
つまり、AIに教える知識を、人間が用意しきれないという現実。
専門家は忙しいし、説明できない判断も多いし、ルールは増える一方で、管理も崩れていく。

AIはだんだん重くなり、柔軟さを失っていきました。
そして、期待はしぼんでいく。
資金は止まり、研究は縮小され、「AIって、結局こんなもの?」という空気が広がる。
これが、いわゆる冬の時代。
ブームの熱が冷えて、静かに雪が積もるような時間。

でも、この冬は、無駄じゃなかった。
「人間が全部教えるのは無理」という大きな気づきが、次の時代への扉を開くことになります。

やがて人々は思うようになる。「だったら、AI自身に学ばせよう。」
ここから、第三次AIブームへ——。

名前の通り、「専門家(エキスパート)の知恵」を、そのままAIに入れようという試みです。

お医者さんに聞く。技術者に聞く。熟練者に聞く。
そして、その答えを一つずつ書き留めていく。
・もし熱があって咳が出ていたら、風邪の可能性
・もしこの部品が壊れていたら、ここを点検
・もしAならB、BならC
こうして集められた大量の「もし〜なら〜」の集まり。
これが、ルールベース型AI。

・病気の診断
・機械の故障判定
・専門的なアドバイス
など、特定の分野では、本当にすごかったのです。
ですが……「知識獲得のボトルネック」に突き当たってしまいます。

エキスパートシステム(ルールベース型AI)とは、人間の専門知識を「もし〜なら〜」というルールとして大量に登録し、それをもとに判断を行う第二次AIブームの中心的な人工知能です。

エキスパートシステムが広がり始めた頃、人々は希望を持っていました。
「専門家の知識を集めて、それをAIに入れていけば、きっと賢くなる」

だから、聞きに行きます。
医師のところへ。技術者のところへ。ベテランの職人さんのところへ。
そして、一つずつ書き留める。
こういうときは、こう判断する。この症状なら、ここを見る。この音がしたら、次はこれ。
最初は、うまくいきました。AIは、ちゃんと答えを出すようになる。
人々は思います。「もっと知識を入れよう」。
でも、だんだん空気が変わってきます。
専門家は忙しい。説明できない判断も多い。「なんとなく」でやっていることも多い。
ルールとルールの間には矛盾が発生し、「あいまい」なところも多くて。機械はそれをうまくさばくことができない……。
しかも、ルールは増える一方。
100個。1000個。1万個。
増えれば増えるほど、矛盾が出てきて、管理が難しくなって、全体が重くなっていく……。
そして、誰かが気づきます。
「あれ……AIに入れる知識が、追いついてない」

これが知識獲得のボトルネック。
AIを賢くするための知識を、人間が用意しきれない、という現実。

人間の知恵は、体験の中にあって、言葉にならない部分も多くて、状況ごとに形を変える。
それを全部、ルールとして書き出すなんて、ほとんど不可能。
この「詰まり」が、第2次AIブームを冷ましていきます。